32 ページ33
.
『…分かった』
「ただし、このことは誰にも言っちゃいけないよ。言ったら、パパとママ、どうなっちゃうかね」
『…言わない』
「俺たち、凄い人たちだから。言ったら、分かっちゃうからね」
『うん』
「それじゃまた、8年後に。お前ら、行くぞ」
「はい、BOSS」
そうして男はお父さんとお母さんを連れて去っていく。
……家に、火をつけて。
私はその場から動けなかった。
目の前で起こったことを理解できなかった。
すると、去っていく男たちの一番後ろの男がこう言う。
「ほら、早くしないと死んじゃうよ？ママたち、助けられなくなっちゃうよ？」
私は歯を食いしばって家を出る。
6歳の脳で。どうしたらいいのか、考えながら。
そんな時にふと路地裏が目に入った。
少し前に傷つけてしまった男の子。
ひとりぼっちの男の子が座っていたからあめちゃんをあげただけ。
そんな男の子が、私の脳裏からずっと離れなかった。
足を進める。するとそこには、その男の子がいたんだ。
彼はこちらを見て驚く。そんな君に私は謝った。
『かえるばしょ、なくなっちゃったから』
その一言に彼は動揺し、ご飯をくれた。
＿＿そして、それから一緒に過ごしてくれた。
決して笑うことは少なかったけど、それでも確かに彼は私の支えになっていた。
彼がいなかったらここまで生きて来れなかった。
だから最期は笑って欲しかった。
そんな想いを抱えて私は立ち尽くす。
ここは、夢の中…？
＿＿ねえやだ、やっぱり死にたくない。
私まだシッマに名前呼ばれてないの。
私にはあの約束があるんだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えむいー | 作成日時：2024年2月16日 11時
