戸惑い-1 ページ22
目覚まし時計のアラームを手探りで止め、のろのろと布団から這い出す。実技試験で久々に多くの筋肉を使ったせいで、身体の所々が鈍く傷んでいた。
腕を上げ、これでもかというほど巻かれた包帯を解いていく。家に帰った後、私の傷を見て動揺した母が施した処置だった。目立つ所にあるから目を引くだけで、怪我自体は大したものではない。血の匂いを隠す意味で、取り敢えず新しい包帯を巻き直し、いつもの身支度を終わらせる。人間の匂いを消す香水は、やはり念入りにかけておいた。
制服の肩部分には、真新しいランクバッヂがキラキラと輝いていた。中央には、「1」の紋様が浮かび上がっている。悪魔の階層社会の仲間入りをした証拠だ。
鈍い色の魔界の空の下、重い身体を引きずるようにして、学校への道を飛行する。どうにも気分が上がらないのは、何も身体的な疲労感のせいだけではない。私の頭の占めるのは、やはり、あの紫の帽子をつけた悪魔だった。
広い魔界でたった1人、私の血肉の味を知る彼は、私をその腹の中に収めんと近付いてきたのだと思っていた。好奇心の強い悪魔という生き物にとって、美味い血を持つ稀有な悪魔というだけで、興味を惹かれるのは仕方のないことなのだと思う。
昨日の一件で治癒効果も有していることが確認でき、特異な点は味だけではないと分かった。辛いことだが、「食材」としての希少価値も高まったと考えていいだろう。彼の嗜虐的な態度だって、猫が鼠を食らう前に甚振るのと同じように、食前の狩りを楽しむ行為に過ぎないと、私は怯えていた。
けれど。昨日の彼は、そういった印象からはどこかずれた言動を取っていたように思う。自分からは逃げるくせに、と、チーノくんを助けたことを取り上げて非難するのは、何処かおかしい。だって、別に彼からすれば、私が誰と何をしようが、関係のないはずじゃないか。かと思えば、突然話を切り上げて、1人で飛んでいってしまったし。
決定的な矛盾とは言い難いが、一連の出来事には細かな違和感が散りばめられていた。私を睨む彼の目の中の感情は、複雑でとてもじゃないが読み解けない。これからクラスメイトとして、どのように振る舞えばいいのだろう。未来の学校生活を憂いている間に、もう校舎へと着いてしまっていた。
私はこの時、彼に対して向き合ってみたいと僅かに感じていることに、自分では気が付かなかった。
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いらお(プロフ) - お皿さん» ありがとうございます、はてなマークに笑っちゃいました（笑）応援とても嬉しいです、頑張ります！ (2023年3月2日 7時) (
レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - りうっこさん» 返信遅れて申し訳ありません。ありがとうございます、ストライク取れて光栄です！ゆっくりにはなるかと思いますが、更新した際にはぜひチェックしてやってください…！ (2023年3月2日 7時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
お皿(プロフ) - 陰から応援してる者です...もう、本当に大好きです...ありがとうございます（泣）（？）これからも陰ながら応援させていただきます。頑張ってください!! (2023年3月1日 22時) (レス) @page27 id: 5bd738696b (このIDを非表示/違反報告)
りうっこ - ぶっ刺さりました。ドストライクです… 割と久しぶりの感覚かもです！更新めちゃくちゃ楽しみにしてるので、頑張ってください！！ (2023年2月3日 9時) (レス) @page26 id: 182708b139 (このIDを非表示/違反報告)
いらお(プロフ) - 明日花さん» コメントありがとうございます、すごい嬉しいです！拙い作品ではありますが、明日花さんの性癖に刺さったのでしたら光栄に思います。ゆったり更新してまいりますので、気が向いた時にでもまた本作品を読んでいただければ幸いです！ (2023年1月6日 22時) (レス) id: 6c40816166 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：いらお | 作成日時：2022年12月28日 16時
