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「おんぶしなさい」
黙っててくれ元お嬢様
もう十数歩で豪華な両開き扉の玄関があるじゃないですか、我慢してくれよ
「どうして何もいわないのよ。ねぇアル……ん?」
どうしようかと思考を巡らしていれば、やいやいと言ってるエニスのすぐ近くに、後ろにいたショッピ様が来て
軽々しくエニスのことをお姫様抱っこした
「これでええか?」
「わーい」
死んだ目には似合わねぇような喜びの表現をエニスは口にした
俺達よりも上の立場にいるショッピ様がエニスの要望を聞いたっつーことは身体の……
………やめておこう、あんまり考えたくねぇ
やっぱり、エニスに対しての情というか何つーか
自分のことで精一杯じゃなくて、エニスの事を優先順位が高めな思考回路になってんな
主人が死んでるとエニスから聞いた後に色々と手を尽くされて、それで体になじんでる隷属としてのそう言った何かがこいつのことを主人であると認識してんだ
自分のことを再認識すると、前の主人にこってり丁寧に丁寧に身も心も全部が躾けられてんなぁって思う
怖ぇなぁ……ほんとに
重そうな玄関扉をフューラー様自身が開け放って、俺らに対して「入れ」と言葉と仕草で促した
慣れないその状態にむず痒くって、初めて食した食べ物がアレルギーだった、みたいなそんな感じの拒否反応らしきものが体中を巡る
さっきからいろんなものが巡りすぎて目眩でも起こしそうなくらいだ
入れ、と言われたんだ
恐る恐る、それでも恐怖してることを主人にバレたら…どうなんだろ
前の主人は怒って罰を与えることもあったし、恐怖する俺達の姿を見てご満悦そうな時だってあった
あの人の感情とか怒りの沸点とかは日によって変わるから、ずっとそのことを意識して、顔色をうかがって……ってずっと恐怖しないとやってられなかったんだ
ひとまず、新しい主人に己の恐怖がバレないように
玄関扉の内側に一歩、足を踏み出せば
裸足の足の裏に伝わる硬くて平面の、冷たい感触
よく見てなかった内装の視界情報が一気に脳に直撃して、この一面綺麗に磨かれたタイル床を、砂や泥とかその他諸々で毎日汚れて洗ったことのねぇ自分の裸足で汚した事を理解して
出かかった言葉と、動きかけた体を何とか我慢した
そうだ、前と今の主人は違うんだから
勝手に頭を床につけて謝り倒して許しを請う方が、駄目な場合だって多分あるんだ
反射的に目はつぶったけど何もされなくて
チラと主人の方を見たら目が合って、ものすんげぇビビった
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作者名:ねっこんこん x他1人 | 作者ホームページ:http://nekokobuta
作成日時:2024年3月20日 2時